ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリで、胃の粘膜で生息する細菌のことをいいます。
そもそも胃の中というのは、強力な酸性環境にあるので細菌が生き延びることは難しいです。
ただピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を分泌し、胃酸を中和する(胃内の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することで、酸との中和が可能)ので、生きながらえることができるという特徴があります。
なお胃内で同菌に感染すると慢性的に胃炎を引き起こすことがあるほか、胃・十二指腸潰瘍になったり、胃がんの発症リスクを高めたりするので、感染を確認した場合は速やかに除菌治療を行う必要があります。
ちなみに感染経路ですが、胃がまだ成長途上にある幼少期にピロリ菌に感染している大人からの口移しによる食事が有力ではないかと考えられています。
このピロリ菌に関しましては、成人以降に新たに感染することはまれとされています。
感染の有無を調べる検査については、上部消化管内視鏡(胃カメラ)を用いる検査と内視鏡を使用しない検査の2種類あります。
それぞれ、いくつかの方法があるのですが、詳細については次の通りです。
内視鏡を用いる検査
上部消化管内視鏡(胃カメラ)で胃内を観察するほか、一部組織を採取するなどして判定をつけていきます。
主に以下の方法があります。
迅速ウレアーゼ試験
ウレアーゼを分泌するピロリ菌の特性を生かした検査で、採取した胃粘膜に特殊な反応液を加え、アンモニアの有無を調べることで、感染の有無がわかるようになります。
培養法
採取した胃粘膜組織を培養するのですが、5~7日の期間を要するので、結果がわかるまで1週間程度はかかります。
鏡検法
顕微鏡を使って採取した胃粘膜組織を調べることで感染の有無を判定します。
内視鏡を使用しない検査
以下の検査は、内視鏡を使用することがないので、ピロリ菌感染の有無のみに特化した検査になります。
尿素呼気試験
検査を行う方が吐き出した息に含まれる二酸化炭素の量を計測することで感染の有無がわかる検査になります。
抗体測定法
採血や採尿を行い、それらにピロリ菌に対する抗体があるかどうかを調べる検査です。
便中抗原測定
便を採取し、その中にピロリ菌の抗原が検出されると感染していることになります。
除菌治療について
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染していることが判明した場合は除菌治療を行います。
治療内容は薬物療法で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)をはじめ、アモキシシリン(AMPC)、クラリスロマイシンの3種類を7日間連続で服用していきます(一次除菌)。
その後、服用を終了してから2ヵ月後に除菌判定検査を行います。
その結果、除菌されなかったという場合は二次除菌となります。
この場合も薬物療法となりますが、PPIとAMPCのほか、メトロニダゾールの3種類を7日間連続して服用していきます。
一次除菌と同様に服用が終了してから2ヵ月後に除菌判定検査を行い、それでも除菌がされないとなれば三次除菌を行うこともありますが、三次以降は保険適用外となります。
除菌率につきましては、一次除菌が約70~90%、二次除菌で約80~90%となっています。
薬物療法による副作用としては、軟便や下痢をはじめ、発疹、味覚異常のほか、出血性大腸炎や肝機能障害が見受けられることもあります。